あけび#斉藤×時尾

よく熟れたアケビが、大きく開いて蜜を流す。
甘酸っぱい香りが漂い、綺麗に割れたその内部は真っ赤に濡れ淫靡にも早く食べてと急かしているようだった―

あけび

子供の頃、ふと見てしまった光景が今でも忘れられない。
近所のある宿がいわゆる女郎宿と呼ばれるやつで、親から近づくなと言い聞かされていた。
しかし子供とはそういわれるとますます近づきたくなるのが世の常で、俺もまたその一人であった。
ある日女将が出払っている隙をついて、俺はこっそりと裏口から忍び込んだ。
途中で客やら女郎やらに会うのではないかと用心しながら廊下を歩き、とある部屋へと入り込んだ。
まだ誰もいないが、すでに一端どこかへ隠れないとという気持ちが子供の俺をそうさせた。
いずれにせよずっと廊下をふらふらしているわけには行かない。

そうやって丁度その部屋へ入り込んだとき、すぐ外から声が聞こえて「ここです」と指図する声がするではないか。
慌てる俺。
瞬時に押入れへと飛び込み、息を殺した。
気付かれてはならない、気付いてくれるな、そう願って隙間から外を覗いたが、どうも外の二人連れは気付く様子が無い。
外には布団が敷かれていたから、きっと押入れを空けることは無いに違いない。

そとの二人は、気兼ねすることなくべったりとしている。
意味ありげなニヤつきを浮かべて女郎は手を男に回す。
・・・いったいなんなのだ?
当時なにもわからなかった俺は、これからこの二人に何が起こるのか酷く興味をもった。
きっとこれが親の言う見てはいけないことに違いない、それとなく悟ったが、今更引き返すわけにも行かない。
この二人が出て行くまで―情を交わし終わるまで―
行動は制限されてしまった。

闇から外の二人を凝視する。
やがて男は女に跨り、そのまま裸になった。
男は女の足を押し開き、しきりにその間に頭を突っ込んでいる。
男の頭が蠢くたびに女は聞いたことも無いような悲鳴を上げてよがった。
―苦しいのか・・・?ならば助けるべきか?
何をしているのかまったく判らない子供の俺は、女がなにやら苦しんでいるのかと思った。
苦しんでいるならば助けてやらねば、そう考えて思わず腰に携えた木刀を強く握り締めたほどだった。
だが。
「もっとやっておくれやす!」
という女の声で、
一気に上った血が降りた。
混乱した頭は、あれが女にとってはいいものらしいと結論つけた。
なにがなんだかわからないが、邪魔をしてはいけないものに違いないと。
思わず震え声をだしそうになったが、唇をかみ締めて声を押し殺す。
そんな子供の得体の知れぬ恐怖などとはまるで蚊帳の外にいるであろう当の二人は益々荒い息を吐きながら、より窮屈そうに手足を絡めていった。

男の一物は気味悪いほど立っていて、女の足の間へ合わせるように引き込まれていく。
途端女は「あぁ」と嬌声を上げて、そのまま絡まった蛇のように動き始めた。
二人の下半身がくっついては離れ、くっついては離れを繰り返す。
その動作は激しくなりなにか水音を立て始めたかと思うとそのまま二人はバタリと倒れた。

またしばらくして男はむくりと起き上がり、女を仰向けにさせた。
今度はなにをするのだ?
唾を飲み込み再び男のしようとする一挙一同に目をこらそうとすると、急に窓から月明かりが差し込み、丁度股を開いた女の根元が一瞬ちらりと見えた。

そう、あれはまるで・・
真っ赤に熟れた、あけびのようであった。

一瞬の出来事だったからよく伺いしれなかったが、なにか透明な蜜が塗りたくってあるかのようにてらてらとそこは光り、初めて晒される禁断の香りを嗅いだような感覚に囚われた。
そしてその時、
初めて勃起という経験を俺はした。

そばで女が自分のものを慰めている。
ねっとりとしたぬめりが女の指に絡みつき、俺の視線から逃れるようにしてみをくねらす。
恥ずかしいと小さな声で俺に訴えるが、決してそれを止めさせること無く俺は女を観察していた。
昔覗き見たあの女郎のように、今目の前にいる女も苦しんだ顔をしてその行為に耽っている。
―苦しいのか?
あの時感じた疑問の答えは、大人となった今、明白に分る。
女は、早く俺のものが欲しくて苦しんでいるのだ。
自分の穴に丁度あった鍵で、早く自分の快楽を解放して欲しくて「早く開けて」と苦しんでいるのだ。

しかし俺は、それを十分我慢した先にもっと大きい快楽が待ち受けていることを知っているから、あえて女に手は出さない。

女の声がやや激しくなったとき、俺は女を押し倒し、具合がどうなっているのか確かめるべくも内腿を大きく開かせた。
予想通り女のソコは蜜で濡れ、桃色の肉襞二枚が真珠貝の如く綺麗に割れていた。
赤い襞が美味しそうに開き、その中の小さな粒が潰してくれとばかりに立ちあがっている。
「・・・」
女の耳元で静かに呟き、手で草を押し開いてその粒を舌で転がす。
きつく吸ってやったり、強度を変えてやさしく舐めてやったり。
そのたびに女は喘ぎ下の小さな管から湿り気を吐き出した。

粒を下で弄りながら、俺は湿り気を吐き出す口に自分の指を抜き差しし始める。
左手の中指と一指し指を二本重ねて突っ込める限界まで差し入れて動かす。
たびたび中指を折ったときに当たる部分をうまく刺激してやりながら女が数度か達するまで続けることを止めなかった。

「もういいか。」
あの時の男が卑猥な笑みを浮かべたように、今の俺もそんな風に口元を歪めぐったりとした女の根元に自分のものを挿しこんでやった。
とたん女は息を吹き返したかのように呻き声を上げ、バネ人形のように身体を振り上げで下半身を動かし始める。
先端の膨らみが女の粘膜の凹凸にうまく引っかかり、くちゅっとした音を立てるたんびに女は締め付けが良くなり俺のものを悦ばせた。

時にゆっくりと、時に早く洪水のように濡れて滑る粘膜を己のそれと擦り付けあい、ただ快感を感じる為だけにケダモノに成りきる。
早く満足する為に柔らかい肉を味わい貪り尽くす肉食獣のように。

こすり付けあう内に自分の物が根元から大きく膨張し、激しく締め付けが走ったかと思うと、そのまま欲望を女の中へ吐き出した。
女も大きく体をのけぞらせたかと思うと脱力して俺の腕の中で尽きる。
激しい息遣いの中ゆっくりまだ硬さが残っている自分のものを引き抜くと女の芯へ達せなかった己の白濁した欲望がどろりと垂れてきた。
放たれたものの、女の中に潜むそれと結びつかずに死んでゆく哀れな種子達。
それを思うとなぜか無性に女が憎たらしく思えてきた。

あけびが真っ赤にうれて蜜を溢れさせる。
食べ終わると、残された種たちがけが土へと無残に捨てられていく。
が、中には大地へ根付き、成長するものもあるという。

今宵もまたそんなアケビを喰らい尽くして
俺は、根付くともわからない種を
女という大地へと残す。

Comments are closed.