―ある食後に時間は遡る
「アンタ、宇宙人も食べてたの~!!」
ブルマの素っ頓狂な声を聞きながら、べジータは言葉を返した。
「当たり前だ。飯など支給されなかったからな。食えればなんでも食う。」
あっけらかんとした口調でとんでもない事を口にする男。
でも・・・
そんな男の言葉を受けてふと思うことがあり、ブルマは言葉を繋いだ。
「同じ人間の形した宇宙人が食べれるだなんて・・・。ちょっと引いたわ。」
「・・・ふん。動物と思って食えばなかなか美味いぞ。」
まんざらでもなさそうな顔を浮かべ、べジータはブルマを見つめ返す。
そう、このベジータという男は時に鋭い程の高圧的、
いや、挑発的と言い改めたほうがよい視線を投げかけてくる。
しかしその類の手には散々慣れ切っていたブルマにとっては、面白い言葉巧みなゲームでしかない。
「げーだ。アンタやっぱり怖いわ。まさか地球人も食えるとか言い出さないでしょうね~?」
そうやってたまにはこちらから引き寄せてあげて。
「・・・・」
しばしの無言。
ただその無言が答えであるのは頭のいいブルマには容易に理解できた。
「考えてるトコ見ると『食えない』ってのが答えか~。・・・なんだかんだ言って地球人にはやさしいのね。」
わざとらしく、そんな言葉を選んであげる。
もう少々、
このゲームを楽しむために。
『やさしい』
・・・その言葉にカチンときたらしく、予想した通り男は思わず声を荒げた。
「ふん、うるさい。これ以上とやかく言うと本当に食ってやるぞ・・・。
ちょうど食った事もないし、オマエを王子に食われた最初の地球人の女にしてやっても
いいんだ。まぁ・・・どんな味がするかは想像できるがな。」
口元が笑っている。
そう、明らかにブルマを誘っている。
ーいいわ・・・乗ってあげるー
そう決めるとブルマも負けじと甘い挑発を浮かべた目でべジータを見返す。
「・・・どんな味ですって?上等な味に決まってるでしょ。」
絡み合う目線。
今度はべジータの番。
「そこまで言うのなら確かめてやるが?まずはそのうるさい唇から食ってやる。」
そう言うとべジータはゆっくりブルマに顔を近ずけていった。
情事までの甘い駆け引き。
これほどまでに美味しいひとときはない。
「ゆっくり味わって食べてよ。」
目を閉じる瞬間女は囁いた。
それに呼応するかのように男も笑みを浮かべ最後の一言を忘れず付け加える。
「骨の髄までしゃぶりつくしてやる。覚悟しとけよ・・・」と。
こうして満月に照らされた二人の影はゆっくり重なり、深い闇へと沈んでいった。