それは持ち主を悦ばせる為に存在するもの。
持ち主の手によって飽きたらぬまで弄ばれ、いつ自分への興味を無くされるかと怯える遊具。
時に乱暴に愛され、時に慈しまれながら日々を過ごすさだめ。
鏡の中には、座ったまま足を大きく開き後ろから伸びる手により辛うじて秘部を隠している女が移っている。
しかし”そこ”へ宛がわれた手は執拗に執着を見せ、人差し指と薬指で黒い草を押さえつけつつその間の指で草の根ずく柔らかい地面を深く漁った。
湿り気を含んだそこを掘り返すように押し開き割っていくと、手の持ち主は粒が埋まっていることに気付く。
その粒がどんな具合に成長するかが楽しみで壊さないように注意を払って触れると、めったに味わえない刺激の為か粒をそこへ埋めた女は一瞬体を強張らせた。
まるで人形のように脱力し、完全に身を任せている鏡の中の女。
伏せた睫が目覚めの時を待つように己の姿を凝視している。
「まったくお前は好い身体をしているな。」
そう男は女に話し掛け、それと同時にもう片方の手で女の乳房を救い上げた。
片手でもやや溢れる弾力に、指を広げて力を込める。
男の指を食い込ませながら尚も張りを残す女特有の器官はこうして男の触覚を存分に楽しませる術を持つ。
「こんなに腫れた代物なんぞもって、男に遊ばれる為にあるようなものだな。」
相変わらず満足げな表情を浮かべた男は鏡から目を離し一つの命令を女に下す。
鏡から自分の姿を目に離すなと。最後まで自分の姿を直視せよと。
男のいうがままかすかに女が頷いたのを確認すると、男は目線を女へと落しそのまま女の身体に食いつき始めた。
うなじに頭をうずめ、舌を当てながら唇を這わす。
同時に左手は胸を掌に収め揉みしだきつつ感じやすい頂を指の腹で撫で回し、右手は中指が上下に動き、ふと止まっては小さく円を書くように止まったりした。
肩の上で荒くなる男の吐息を肌で感じつつ、それでも鏡を見つめる一人の女。
こうやって男を無我夢中にさせている肉体をぼんやりと認識しながら、「男に遊ばれている」自分を自覚する。
壊さないように細心の注意を払ってくれているのはしぐさで分かる。
だが男はまた、壊れない限界まで女を弄くり倒すのが好きであることも薄々承知していた。
男の身体が乗り出し、私に口付けを迫る。
これでは鏡が見れないと内心慌てつつ、それでも男の都合のままに答えてみせる。
体勢の為か息が苦しい。
それでも為すがまま、彼の要求に答え続けなければならないのだ・・・。
舌を触れ合わせ唇を重ねては角度を変えて吸う。
深い舌の交合はこんなにもあなたが私に夢中になっていると知ることが出来る。
そしてなにより私自身も、貴方にそうやって愛でられることを心から望んでいた。
ひとしきり唇のふれあいを楽しむと、旦那様は再び笑みを浮かべて私に這わせた指を動かし始める。
特に右手の人差し指と中指を合わせて私の目の前で揺らして見せ、旦那様は愛液で濡れたその指を私の口へと運んだ。
「感じやすくなったな。」
囁きながら私に蜜を舐めさせ、十分にぬめりが取れたことを確認すると、そのまま元の場所へと宛がわせる。
「・・・貴方が私に教えたのでしょう?」
些細な反抗を試みるが、それすらも貴方の思うがまま。
意地悪そうに、それじゃこうするかと鏡に微笑んでみせると、そのまま一つに合わせた二本の指をあっというまに私の中へとうずめて見せた。
思わず甘い悲鳴が漏れた。
柔らかな花弁を押し開き閉ざされた細い道を割る。
本来ならば男の根のみしか立ち入りを許されないその中に、男は指で作った根の変わりを挿し入れ快感を引き出す為に行き来を開始する。
暫くはゆっくりと動き感点を焦らす。
やや表情が強張り意識とは裏腹に乱れた反応が鏡に生々しく映し出されると、待っていたとばかりに男の手の動きは早まっていった。
股を広げ、だらし無く愛液を零す下半身の唇。
そしてその赤い唇をこじ開けて内部を激しく侵食するは愛する男の堅い指。
好き勝手に散々蝕まれ、蜜を大量に吐き出させられる屈辱という名の羞恥は女をより一層かき立てるに過ぎない。
粘液が捏ねくり回され指で素早く何度も中で往復されると、見事なまでにもう女は堪らなくなってしまうのだ。
すっぽりと男の指をくわえ込み、摩擦される度にどうしようもなく淫らな音を奏でる自分がいやらしくて酷く感じてしまう。
まるで人形のように愛撫されながら、その本性は痴女と変わらないという状況は、この男によって開花させられていく。
恨めしく思いつつもその逆、快楽が年々深まっていくという事態は自分に潜む牝の部分においては喜ばしいに違いなかった。
くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ・・・
止まらぬどころかけたたましく部屋に響く音。
ここまでくると女はじわりと与えられる肉欲の触感に快感を覚えはじめ、溺れそうな自分から逃れようと足を閉じ腰を引こうとする。
だがそれを安々と許す筈もなくともすれば逃げる足を両足で押さえ付け、猥褻な行為に浸っている姿を見せ付けてやるのだ。
「俺の指を食わえてこんなに音を出すとは・・・」
ふぁっ!
「こんなにコッチは悲鳴をあげているのに?」
身を躍らせ震える肉体。
とてつもなくぞくりとした欲望の塊が四肢を支配する瞬間は近い。
自分の粘液を纏った襞と男の指が作り出す音を聞きながら、無意識の内に女の方から熱心にねだりだす。
入れてくださいと、早く欲しいと。
聞き入れられぬと読み取るや否や、絞りだすように摩羅をはめて・・・と啜り泣き、やがては自ら腰を振る。
ゆさゆさと揺れる身体、つられて身体以上に上下する乳房、すべてが最高潮に達するが為に行われる仕種。
狂ったようにひたすらそれだけを繰り返す。
やがて単調な音がより深いものへ進化し挿し入れられた指が白いぬめりに塗れる頃女は苦悶の、正しくは”快楽”悶の皺をよせ、開かれた脚の付け根から突き抜ける恍惚の最中に絶頂を迎えた。
自分でもそこがひくついているをぼんやりと認識しながら。
しかしまだ彼の人形遊びはこれからが本番であることを女は後々思い知らされることとなる。
お前の良い所は夜には従順になることだ。
脱力した妻の肌をなぞりながら汗ばみぬめる感触にやや満足する。
結婚し10年に手が届きそうな案配だが深い快感を知ってしまった女の体はすっかり自分好みの作りになったものと思わずにはいられない。
なにせ己の思い通りに悲鳴を上げ身を震わせ果ててくれるのだ。
最近では羞恥に咽びながらも欲望に耐えられず腰を自然と振る眺めが堪能でき交合の楽しみが増えた。
そして今こうやって母親の面を脱ぎ男の情婦へと身を堕としている時尾は正に妖艶で完成された美術品のように美しいといわざるを得なかった。
ひたすら一途に向けられるしとやかな従属の態度は痛々しい位愛おしく、また俺を狂わせるには充分な魅力を持っていた。
目を落とせば先程の指遊戯で葛湯のようにトロトロとした粘液が恥丘の合間を割りねっとり溢れているのがみえる。
そうやっていい具合に熟れた状態を誰がやすやすと見逃すものか。
惹かれるままに柔肌をまさぐってゆく。
うなじに耳、再びうなじに唇を合わせつつ腹尻内腿に掌を這わせる作業も忘れない。
下半身に飽きたらず肉付きの良い腕を丹念に撫でて脇より胸を掬う。
お椀型のふくよかな柔らかさに似合わず硬く突起状になった粒を薬指と人差し指で挟み中指の爪で薄く引っ掻くとか細い声が確かに耳を通り抜けた。
『後生ですから…早く…』
羞恥を押し殺した台詞にたがが外れ背中からのしかかると、時尾は尻を突き出し犬のように服従の姿勢を示した。
彼女自身もそれを渇望していたのだろう、言わずもがな腰を掴みふっくらした山の隙間へと自身の陰茎を押し入れてやった。
肉厚で控え目な花弁が微かに露出し、その下にある小さな子宮の除き穴にしっぽり型をはめてやる興奮といったら言葉に表せない。
相手がイッたばかりのせいか中は収縮をくりかえし挿しながらも心地よさが伝わる。
狭い鞘とはいえたっぷりと感度の深い粘液を滲ませたそこに己を納めてしまうのは大して骨の折れる作業ではなかった。
やや逃げるように体を前へ退いた女も繋がってしまえば緊迫した溜息をつくしかないのは至極当然の事、あっと身体を強張らせつつ繋がりが完了すれば力を抜く周到さは本能の成せる技か。
俯き窺い知れぬ表情を見れない体位なのは残念だが今は俺自身が一刻も早く極楽へ行きたかった。
先ずは馴染ませるように出し入れする。
クチュリと撹拌する度に熱いものが絡み付き反り返った赤黒いそれが蒸した布で包み込まれているかのように圧迫された。
あまりの内の熱さのせいか身体がだんだんとほてってくる。
茹だる暑さに駆られるかの如く叙々に刀身が空気に触れる表面積を減らしてゆき、深部を細かく小刻みにえぐりだすともう我慢ならないのかくぐもった嬌声を漏らし時尾は床へ身体を突っ伏してしまった。
更に背を反り肩を怒らせ始めればしめたものでついには自ら俺の竿を食わえ腰を使いだす。
先の鬼の頭をざらりとした表面で削るようにすりつけ菩薩の逸るまま牝の飢えた本能を満たして行く…
そんな姿を上から見下ろし眺めるのもおつだが 今は愛でる余裕もないほどに自分が破裂しそうで作業を急いだ。
「…ぁァっ」
そんな間にも相手は達してしまったらしい。
腰使いが止み根本を強く縛られ吸い込まれるような収縮を喰らわせられる。
連続した一際強い刺激にかろうじて耐えながらパンパンと馬を急かすように仕上の突きをやると水をやったように時尾は再び甘い声で鳴いた。
「あん…ぁあ…!」
完全に力の抜けた体はありのままの躍動を直に脳に伝える。
達した身体は反応良く所謂逝き続けたような状態になり、許容範囲を超えてしまったのか静かに攻めに耐えていた女は最後の理性的な悲鳴を吐き出すと息急き切ったように身体の奥から淫らな喘ぎを噴出させた。
下の唇も好物をくわえたままジュブジュブとうっすら泡を噴き不肖にもよだれを内股にまで垂らしている。
それでも尚貪欲に性交の快感を貧り淫猥な呻きを上げて水音を立て続ける女が一人。
もはや自制出来ず、声を噛み殺すという嗜みすら思考外に弾き出してしまったのだ。
「…はぁ…んっっふっ」
『もっ…とぉ…ほし…奥に、は…めって』
果たして俺の声が聞こえているのか解らない。
決壊した不遇のような女を犯しながら激しい独占欲と支配欲に満たされ俺は果てに達した。
たんと数週間分の養分を奥に注ぎ込みようやく自身を取り出すと、名残惜しむように絡み付く愛液が剥き出しの先端から糸の様に引いていた。
雨降り後の蜘蛛の糸と見まごうばかりのそれは―朧な月の光で夜露にも似た反射を返し断ち切るのが心苦しいとまで思わせられてしまう。
『まだお前が名残惜しい』
胸で呼吸をしながら時尾に倒れ込み、しばし頭を冷やす。
放心しきった妻を横目見つつ散々染みを作ってしまいながらもう一戦したいと思い出している自分自身に呆れる。
こうも敷布団を汚してしまってはきっと明日時尾が困るだろうに―
獣の交尾を映した障子も静かに闇色へ還る。
閨にはしとねに狂った男と女の裸体、絡まったまま離れない。
いくら痴体を晒そうと飽き足りないのか胸と胸を合わせ根元で繋がったまま舌遊びに興じている。
…朝になればまた当分は肌を重ねる機会などなくなってしまう。
今宵を糧に一人の夜を過ごす為、二人揃った夜はただ、こうして互いに快楽の味を味わいあうのだ。